以前、『病院2か所の医療費を安くしたい。高額療養費の対象になる条件2つ。』の記事で、高額療養費の合算について書きました。
「複数の病院を受診したとき、病院1か所あたりの医療費は限度額の80,100円にならないけど、1か月合計すれば高額な医療費になる。」という患者さんへ。
「複数の病院代をまとめると、高額療養費の対象になって、申請できる場合がありますよ。その申請できる条件は2つあります。」という内容です。
ただ、条件だけまとめてあっても、言葉がわからなかったり、なんとなくわかるけどピンとこない患者さん、ご家族も多いです。
そこで、今回は、複数の病院にかかったとき、まとめて高額療養費の手続きをできる【合算の例】をご紹介します。ひとつひとつ、説明付きなので、高額療養費の合算が、イメージしやすく、理解しやすいですよ。
高額療養費の合算できる例を3つと、高額療養費の合算できない例を3つずつ。また、2つの病院は21,000円以上で、1つの病院は21,000円未満のときはどうするのか?ちょっと特殊な例も、1つご紹介しています。
医療費をまとめて高額療養費を申請できる例
A病院、40,200円+B病院、40,200円=合計、80,400円。
たとえば、まずはシンプルに、病院2か所の医療費が、40,200円ずつだった場合。A病院も、B病院も、1か月の医療費が21,000円を超えている。そして、医療費の合計が80,100円を超えています。なので、高額療養費の対象となります。
C病院、22,000円+D病院、60,000円=合計、82,000円。
つぎに、病院1か所の金額が21,000円から1,000円しか超えていない。このような場合でも、1病院の医療費が21,000円を超えて、患者さんの医療費合計が80,100円を超えているので、OKです。
E病院、23,000円+F病院、30,000円+G病院、29,000円=合計、82,000円。
では最後に、病院が3か所になって、それぞれ少額だった場合。「高額療養費の合算できる条件、21,000円は一応超えているけど、いいんだろうか?」と不安に思われる患者さんもいます。ですが、大丈夫です。
E病院も、F病院も、G病院も、21,000円を超えています。また、医療費の合計が82,000円で、80,100円を超えているので、高額療養費の手続きできます。
- 「ひとつの病院で、1か月以内の医療費が21,000円以上」
- 「患者さんひとりの医療費合計が限度額(80,100円)以上」
この2つの条件をクリアしていれば、複数の病院で支払った3割負担の医療費を合算して、高額療養費の手続きをできます。
医療費をまとめて高額療養費を申請できない例
H病院、20,000円+I病院、65,000円=85,000円
まずは、1か所の病院が21,000円未満だった場合です。この2つの病院の例では、I病院は21,000円を超えていますが、H病院が21,000円を超えていません。
医療費の合計金額が、80,100円を超えていても、病院1か所あたりが21,000円未満だった場合は、高額療養費の合算対象外となります。
J病院、19,000円+K病院、81,000円=100,000円
つぎに、病院1か所で既に80,100円を超えている場合です。この場合は、J病院が21,000円なので、まとめて高額療養費の申請することはできません。ただし、K病院は80,100円以上になっているので、高額療養費を適用させることができます。
なので、J病院はそのまま3割負担(19,000円)、K病院だけ高額療養費を使います(80,130円)。医療費の合計、19,000円+80,130円=99,130円。ということになります。
L病院、28,000円+M病院、26,000円+N病院、26,000円=80,000円
最後に、患者さんの医療費合計が80,100円未満の場合です。L病院も、M病院も、N病院も、各病院の医療費は21,000円を超えている。しかし、3か所の医療費を合計すると、80,000円です。
高額療養費は、患者さんひとりずつ、ア~オまでの区分があり、1か月の限度額が決まっています。この限度額を超えなければ、いくら病院1か所あたり21,000円を超えていても、高額療養費を適用することができないのです。
- 「病院1か所あたりの医療費が、21,000円より少ない。」
- 「患者さんの医療費合計が、限度額(80,100円)より少ない。」
この2つのうち、どちらか1つだけでも該当したときは、高額療養費の対象外となります。病院でお支払いした3割負担のまま、変わりません。
2つの病院の医療費を合算して高額療養費適用。21,000円未満の病院は対象外。
O病院、50,000円+P病院、40,000円+Q病院、20,000円=110,000円。
3か所の病院にかかり、このような医療費になった場合。高額療養費を使える病院と使えない病院があります。
まず、高額療養費を使えない病院は、医療費が20,000円のQ病院です。Q病院は、1か月の医療費が、21,000円以上になっていないので、高額療養費の合算対象外です。
では、高額療養費を使える病院は、O病院とP病院です。O病院とP病院は、病院1か所あたり21,000円を超えていて、2か所の医療費を合わせると、90,000円なので、合算して高額療養費を申請できます。
このO病院(50,000円)と、P病院(40,000円)と、Q病院(20,000円)の場合、O病院とP病院で、80,430円+Q病院の20,000円=医療費合計、100,430円となります。
計算の内訳は、こちらです。O病院とP病院で高額療養費を使い、80,430円。Q病院は、高額療養費を使えないので、そのまま3割負担の20,000円。(※80,430円+20,000円=100,430円)
また、もし仮に、O病院の医療費が40,000円だったら、病院3か所で100,000円になっても、高額療養費の合算は対象外になります。
O病院、40,000円+P病院、40,000円+Q病院、20,000円=100,000円。
O病院とP病院をたしても、80,000円で、高額療養費の限度額に達していない。また、Q病院は、病院1か所あたりの21,000円未満。なので、合計金額で100,000円と高額な医療費になりますが、高額療養費を使えず、病院でお支払いした3割負担のままです。
高額療養費の合算まとめ。病院領収証の合計を計算して2つの条件をクリアしているか?確認。
- 病院1か所の医療費が、1か月21,000円以上になっていること。
- 複数の病院で、医療費の合計が、高額療養費の区分による限度額(80,100円)以上になっていること。
高額療養費の合算できる条件は、この2つだけ。難しく感じると思いますが、大丈夫です。
- まず、病院の領収証を集めます。
- 集めた領収証を病院ごとにわけます。
- 分けた病院の領収証から、足し算をして、病院ごとの合計金額をだします。
ここで、「病院ごとの医療費合計が、21,000円以上になっているか?」を、病院1か所ずつチェックしていきます。20,999円以下だった病院は、まずここで除外します。
つぎに、21,000円以上だった病院の医療費合計を、すべて足し算していきます。1か月の医療費合計がわかったら、今度は「1か月の医療費が、限度額(80,100円)以上になっているか?」を、チェックします。
患者さんの区分による限度額以上になっていれば、高額療養費の申請をできます。
患者さんの区分による限度額以下だった場合は、高額療養費の申請をできません。
- 「今月の病院代は高かったなぁ。出費が痛い。」
- 「もしかして、医療費を合計したら、高額療養費の申請できるかも?」
という、患者さん、ご家族の方は、まずは、病院で支払った医療費の領収証を集めて、計算してみてください。もしかしたら、お金が戻ってくるかもしれないです。
5,000円でも、10,000円でも、少しでも返金されたら、おいしいものを食べたり、毎月の家計に少し余裕ができますよ。
この記事は、「病院2か所の医療費を安くしたい。高額療養費の対象になる条件2つ。」という記事を元に、高額療養費の合算する例を書いてきました。高額療養費の合算については、こちらのページに書いてありますので、合わせてご参照ください。
→病院2か所の医療費を安くしたい。高額療養費の対象になる条件2つ。はこちら
この記事で書いている高額療養費の80,100円は、一般課税世帯「区分ウ」の限度額です。住民税非課税世帯などの低所得者や、収入が多い上位所得者は、区分が変わり限度額も異なります。高額療養費の各区分の限度額は、こちらのページに書いてあります。
→高額療養費の限度額をまとめた一覧。アイウエオ、5つの区分があります。はこちら
この記事では、ひとりの患者さんが、複数の病院を受診した場合に、医療費を合算して高額療養費の申請をするパターン事例です。高額療養費は個人だけでなく、家族(世帯)で合算することもできます。詳しくはこちらの記事で解説していますので、一度ご覧になってみてはいかがでしょうか。
→家族の医療費を合わせて申請。高額療養費の世帯合算する条件4つ。はこちら
高額療養費制度の記事は、区分や回数など他にもご用意してます。参考になれば幸いです。
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