「1ヶ月入院したら、入院医療費はどれくらいになるのかな?」、「入院期間が30日だったら高額療養費の手続きした方がいい?」という患者さん、ご家族の方へ。
1ヶ月(約30日)の入院で、入院費はいくら位になるものなのか。高額療養費(限度額適用認定証)の対象になるのか。患者さん、ご家族の方からよくご質問いただきます。
入院費用は、1か月で30〜40万円。緊急手術などの場合は、100万円以上になることもあります。しかし、高額療養費で上限金額が決まっているので、実際には100万円までなることはありません。
一般課税世帯の患者さんで、大体15〜16万円くらい。緊急手術や緊急入院しても、17〜18万円程度です。
上位所得者の患者さんも、大体36万円くらいでしょう。40万円までかかることは考えにくいですね。
1ヶ月も入院すれば、どんなに安い病院・病棟に入院しても、高額療養費(限度額適用認定証)は絶対的に対象になります。なので、患者さんごとの区分を確認しておくと安心です。
この記事では、1ヶ月入院したら、入院費用はいくら位になるのか?を解説していきます。入院医療費のベースとなる入院料から計算していくらになるのか。高額療養費を使っていくらになるのか。難しく感じるかと思いますので、ゆっくりとご覧ください。
1ヶ月の入院費用は最低でも12万円。ですが、最低15万円かかると思うことをおすすめします。
「一般病棟に1ヶ月間(30日間)入院した」場合、金額がいくらくらいになるのか、計算しました。
一般病棟の入院料(ベッド代)は、正式には「急性期一般入院料」(以下、「入院料」)といいます。入院費用の土台となるもので、検査や治療を何もしていなくてもベッドで寝ているだけでかかる料金です。
この入院料は、6段階あり、看護師の人数や平均在院日数などで、病院ごとに決まっています。
一番高い「入院料1」は、1日1688点(3割負担で、1日約5,064円)。看護師が多め、平均在院日数が短めの病院。
一番低い「入院料6」は、1日1404点(3割負担で、1日約4,212円)。看護師が少なめ、平均在院日数が長めの病院。
看護師ひとりの担当患者さんを少なくして、手厚い看護をする。早めに退院してもらって、次々と新しい患者さんが入院して、入院患者さんの回転率が高くすると、1日あたりの入院料(ベッド代)を高くできる。というイメージです。
なので病院は、大体、1日あたりの入院料が高い入院料1や2などを目指します。
では、ここで1ヶ月入院した場合の入院費用を計算してみます。
| 1日あたり(3割負担) | 1ヶ月(3割負担) | |
| 入院料1 | 1日5,064円 | 151,920円 |
| 入院料6 | 1日4,212円 | 126,360円 |
一番高い「入院料1」で、1ヶ月入院すると、151,920円。
一番低い「入院料6」で、1ヶ月入院すると、126,360円。なので、1ヶ月入院すると、最低でも12万円かかることになります。
ですが、上述した通り、1日あたりの入院料が高い入院料1や2の病院が多いです。
そのため、気持ちとしては、「1ヶ月入院したら、最低でも15万円以上の入院費用がかかる。」と思っておくことをおすすめします。
毎日かかる入院料の追加料金、1ヶ月で2〜3万円。
最低でも12万円(15万円)の入院料は、基礎部分です。実際にはここからもっともっと追加されて、入院料だけでもまだ高くなります。
イメージとしては、これらです。
「看護助手さんいますよ〜。はい、急性期看護補助体制加算追加。(1日160点〜240点)」
「夜勤の看護師もたくさんいますよ〜。はい、看護職員夜間配置加算追加。(1日45点〜110点)」
「大部屋を6人部屋から4人部屋にして、病室を広くしましたよ〜。はい、療養環境加算追加。(1日25点)」
これらは1日ごとなので、入院している期間、毎日追加されます。つまり、入院料みたいなものですね。
では、この入院料の追加分についても、1ヶ月入院したらどれくらいになるのか、計算してみます。
| 1日あたり(3割負担) | 1ヶ月(3割負担) | |
| 急性期看護補助体制加算 | 480円〜720円 | 14,400円〜21,600円 |
| 看護職員夜間配置加算 | 135円〜330円 | 4,050円〜9,900円 |
| 療養環境加算 | 75円 | 2,250円 |
この3つだけでも、1ヶ月合計20,700円〜33,750円の追加になります。
入院初日や初め1週間だけの追加料金、1ヶ月で1〜2万円。
実は入院料には、入院した初日1回だけや期間限定で追加できる料金も多数存在するのです。
「カルテがきちんと整理されていますよ〜。はい、診療録管理体制加算追加。(入院初日、30点〜140点)」
「診断書を作りなど、先生の事務作業を手伝う人がいますよ〜。はい、医師事務作業補助体制加算追加。(入院初日、280点〜1070点)」
「研修医の研修病院になってますよ〜。はい、臨床研修病院入院診療加算追加。(入院初日、20点〜40点)」
「緊急入院でしたね〜。救急外来から入院ですね〜。はい、救急医療管理加算追加。(入院日から7日間まで、1日420点〜1050点)」
| 1日あたり(3割負担) | 7日間(3割負担) | |
| 診療録管理体制加算 | 90円〜420円 | なし |
| 医師事務作業補助体制加算 | 840円〜3,210円 | なし |
| 臨床研修病院入院診療加算 | 60円〜120円 | なし |
| 救急医療管理加算 | 1,260円〜3,150円 | 8,820円〜22,050円 |
入院したその日、1日だけで9,810円追加、緊急入院した場合は、25,800円の追加です。
この4つ、合計で9,810円〜25,800円の追加になります。
1ヶ月入院したときの入院費用はいくら位になるのか?答えは30〜40万円くらいです。
ではここまでの金額をたして、合計金額を出してみます。
一般病棟の入院料が、1ヶ月で126,360円〜151,920万円。
1日ごとの追加料金が、プラス20,700円〜33,750円。
入院した日だけ、期間限定の追加料金が、プラス9,810円〜25,800円。
入院料の合計、156,870円〜211,470円です。
繰り返しになりますが、この15万円〜21万円は、入院料(ベッド代)だけです。検査やレントゲン、点滴、お薬など、処置や治療については含まれていません。
どんな検査、どんな治療をするのか、入院内容にもよりますが、検査や治療など全部合わせたら1ヶ月の入院費用は30万円〜40万円くらいはかかります。
手術や麻酔、輸血は、特に料金が高く、緊急であれば、時間外(休日や深夜など)料金も追加になる治療です。緊急手術、緊急入院の場合は、1ヶ月の入院費用として、100万円以上かかるでしょう。
高額療養費があるから大丈夫です。患者さん自己負担金額には上限があります。
1ヶ月の入院費用は30〜40万円、さらに緊急手術や緊急入院なら100万円以上で、1ヶ月入院すると、かなり金額が高くなります。
抗がん剤や放射線治療などのがん治療や手術後にICUやHCUなどの病棟に入院すると、予定していた入院(緊急入院ではない)だとしても、1ヶ月で100万円以上の入院費用になることもあります。
入院費用の金額がかなり大きくて、驚かれるかと思いますが、大丈夫です。
保険証(健康保険)を使って入院するときは、「高額療養費(限度額適用認定証)」という制度を使うことができます。
高額療養費は、所得によって1ヶ月の医療費上限額が決まっているので、患者さんの自己負担金額を抑えることができます。こちらです。
| 区分ア (上位所得者) | 252,600円+(総医療費-842,000円)×1% |
| 区分イ | 167,400円+(総医療費-558,000円)×1% |
| 区分ウ (一般課税世帯) | 80,100円+(総医療費-267,000円)×1% |
| 区分エ | 57,600円 |
| 区分オ (住民税非課税世帯) | 35,400円 |
この高額療養費を使った場合、いくらになるのか計算しました。
| 1ヶ月30万円の場合 | 1ヶ月100万円の場合 | |
| 区分ア (上位所得者) | 254,180円 | 277,513円 |
| 区分イ | 171,820円 | 195,153円 |
| 区分ウ (一般課税世帯) | 87,430円 | 110,763円 |
| 区分エ | 57,600円 | 57,600円 |
| 区分オ (住民税非課税世帯) | 35,400円 | 35,400円 |
1ヶ月入院したら30〜40万円、緊急手術や緊急入院になれば100万円以上の入院費用がかかります。
でも大丈夫です。3割負担でかなり大きな金額になったとしても、高額療養費である一定の上限金額以上は健康保険が負担してくれますので。
1ヶ月入院したときの入院費用が心配な患者さん、ご家族は、患者さん本人の高額療養費の区分をお調べください。ご加入の健康保険に問い合わせをするか、マイナポータルで確認できます。
高額療養費の区分がわかれば、入院したとき、いくらくらいお金がかかるのか?前もってわかるので、少し不安が和らぎますよ。
【まとめ】1ヶ月の入院費用は高額療養費を使って15〜16万円くらいになります。
1ヶ月の入院費用は、大体30〜40万円。緊急手術などの場合は、100万円以上になることもあります。
ですが、健康保険に加入されている患者さんは、誰でも「高額療養費(限度額適用認定証)」を利用できます。高額療養費は患者さんの所得によって、5区分の上限金額がわかれています。
なので、1ヶ月の入院費用は、患者さんごとの高額療養費の区分を目安にされることをおすすめします。
また、この高額療養費を使った医療費は、入院料や検査、治療など健康保険を使える範囲です。
入院中のお食事代やパジャマ(病衣)やタオルなどの身の回り品、診断書料金などは別料金となります。
入院中のお食事代は、1食510円です。
1食510円×3食=1,530円。3食1,530円×30日=45,900円。
(低所得者、高額療養費の区分オの患者さんは、1食240円です。)
(高額療養費・区分オの患者さんは、1食240円×3食=720円。3食720円×30日21,600円。)
さらにパジャマやタオルなどの身の回り品は、CSセットというセットになっていて、1日300円前後かかります。※最近ではパジャマだけのレンタルはあまり見かけなくなりました。
1日300円×30日=9,000円。
1ヶ月の入院費用がどれくらいになるのか、計算するときには、高額療養費の区分ごとの限度額に、これらの食事代や身の回り品も足した金額で想定されると後々、誤算がなくなります。
私だったら、高額療養費の区分の限度額+10,000〜20,000円+46,000円+10,000円で計算します。
入院費(保険分)、1ヶ月90,000〜100,000円(一般課税世帯・高額療養費の区分ウの限度額80,100円+1%分(多めに見積もり))
入院中のお食事代、1ヶ月45,900円。
パジャマなど身の回り品(例:CSセット)、1ヶ月9,000円
というイメージで、1ヶ月の入院費用は大体15〜16万円くらい。緊急手術などであれば、17〜18万円くらい。
高額療養費の区分オなら、限度額は定額で1%分もないので、35,400円+21,600円+10,000円で、1ヶ月の入院費用67,000円。一応少し多めに見積もって、70,000円ですね。
高額療養費は、3回利用すると、4回目からはさらに限度額が低くなります。区分ごとの限度額はこちらの記事に書いてあります。
→高額療養費の限度額をまとめた一覧。アイウエオ、5つの区分があります。はこちら
保険証や健康保険などについての記事は他にもあります。参考にご覧ください。
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