日本の健康保険には、「高額療養費制度」というものがあります。それは、患者さんの病院代が高額になったら、健康保険が代わりにお支払いする制度です。
なので、実際には医療費が安くなるわけではありません。しかし、患者さんの負担する医療費が一定の限度額までになるので低くなることは確かです。
医療費のこと、病院代のこと、健康保険の制度など・・・難しく思われるのも無理はありません。なので、医療費に詳しい私がわかりやすくご説明します。
この記事では、「医療費が安くなる制度」、「高額療養費制度とは何なのか?」という広い範囲でみた概要を中心に書いています。
高額療養費制度とは?健康保険加入者なら全員使える国の制度です。
「高額療養費制度は、ある基準を超えた患者さんは、高額になった医療費を健康保険が補助しますよ。」というものです。
補助は、助成などとも言われています。患者さんの代わりに、健康保険が医療費の高額分を病院にお支払いすることですね。
ある基準というのは、患者さんや世帯主などの所得によって、医療費の限度額が決まります。低くて35,400円、高くて252,600円+1%までの範囲です。
病院の受付や入院担当者さんが説明してくれるときに、よく使われる80,100円+1%。これは一般課税世帯の方の医療費限度額です。
低所得者の方や住民税非課税世帯の方等は、一番低い35,400円まで。
逆に、上位所得者の方等、収入の多い方は、一番高い252,600円+1%。
というように、所得別に高額療養費の限度額があり、患者さんの負担はその限度額までです。ということです。
社会保険(社保)と国民健康保険(国保)で、健康保険にも大きくわけて2つあります。ですが、心配ありません。
高額療養費制度は、社保も国保も、共通の制度です。なので、どちらでも健康保険に加入していれば、負担する限度額は変わりません。
高額療養費の限度額は、収入によってア、イ、ウ、エ、オまでの5段階にわけられています。区分アから区分オまで、高額療養費の区分については、こちらの記事で詳しく書いています。
→高額療養費の限度額は5つある。区分は所得によって変わる。はこちら
高額療養費制度はいくらくらい安くなるのか?
医療費3割負担の患者さんが【高額療養費】を使わなかったとき。
では、高額療養費を使うと、医療費はいくら安くなるのか?実際に数字を当てはめてご説明していきますね。
例えば、患者さんの医療費が3割負担で30万円だったとします。
患者さんが30万円払うとき、実際には10割負担で100万円の病院代がかかっています。しかし、保険証を適用しているので、70万円は健康保険負担、30万円は患者さん負担になるのです。
通常、病院のお会計でお金を支払うときは、既に健康保険が適用になって、3割負担の料金に計算されています。なので、今まであまり気にされてない方や知らなかった方も多くいますが、実はこのようになっています。
このままでは患者さんは自己負担額30万円も支払うことになります。そこで、「高額療養費制度」を使いましょう。
医療費3割負担の患者さんが【高額療養費】を使ったとき。
3割負担で医療費に高額療養費を使うと、限度額を超えた高額分を健康保険が患者さんの代わりに支払ってくれます。
先程の3割負担で30万円の医療費がかかった場合、高額療養費制度を使うと、患者さんの自己負担額が87,430円まで低くなります。
300,000円との差額、212,570円は健康保険が患者さんの代わりに負担してくれるのです。
つまり、100万円の医療費のうち、
- 健康保険、912,570円(700,000円+212,570円)
- 患者さん、87,430円
という内訳です。
今回はわかりやすいように10割負担のとき100万円でご説明しました。なので、検査や治療内容によっては、医療費が前後します。
入院は1週間の予定…のはずが、退院が延期になるかもしれません。入院中に処置をするかもしれないし、点滴やお薬が変更になることもあります。手術や麻酔をすれば、また金額が大きくなります。病院代はいくらになるかわかりません。
高額療養費制度を知っておけば、限度額が決まっていて、30万円などという高額にならないので、治療内容の変更や入院期間延期などになっても安心です。
高額療養費は入院でも外来でも利用できます。病院代が高いときには、ぜひ活用してみてください。
高額療養費の申請方法は「還付手続き」と「限度額適用認定証」があります。
高額療養費には、【還付手続き(償還払い)】、【限度額適用認定証】で、申請方法が2つあります。
還付手続きも、限度額適用認定証も、結果的には同じ負担金額になります。こちらの記事で詳しくご説明します。
→健康保険の高額療養費。申請手続きの流れを2通り解説します。はこちら
【よくある質問】「還付手続き」と「限度額適用認定証」は、どちらが得か?どちらが損か?
どちらも最終的な患者さんの自己負担額は一緒です。還付手続きでも、限度額適用認定証でも、得することも、損することもありません。ゆっくり、落ち着いて読んでみてください。
→高額療養費はどちらが得か?還付手続きと限度額適用認定証の申請。はこちら
高額療養費制度は所得や世帯などの条件で、いくら安くなるのか?変わります。高額療養費制度については別の記事でまとめてありますので、参考になれば幸いです。
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