日帰り入院の前に渡された同意書に、「施設使用料として1日500円がかかります。」と書かれていました。
施設使用料。「これは、この病院を使う料金ということですか?」と尋ねたところ、「はい」というお返事でした。そのときは、そういうものなのかと思って署名し、支払いました。
でも、あとから引っかかったのです。病院を使う料金なら、それは入院料に含まれているはずではないか。
私は以前、病院・医療事務で入院係をしていました。入院の会計と精算を担当していたので、入院料に何が含まれているかはある程度覚えています。
そして自分が担当していたとき、患者さんにそんな料金(施設使用料)を請求したことは一度もありませんでした。
それでも、絶対の自信は持てませんでした。日帰り入院は別なのだろうか。診療報酬が変わったのだろうか。請求の仕方が何か違うのだろうか。——そう思って、まず調べることから始めました。
調べて、病院に確認したり、お話を聞き、厚生局にも問い合わせました。結果として、同意書が見直され、支払った分は返金されました。
ただ、正直に思うのです。『入院係の経験がなかったら、私も何もしなかったな。』と。「おかしいかも…」と感じても、自信が持てなかったり、面倒だったり、波風を立てたくなかったりして、そのまま施設使用料を払って終わりにしていたことでしょう。
だからこの記事を書きました。病院の医療費、入院費、自費の何が請求してよくて、何がいけないのか。おかしいと思ったとき、どこに聞けばいいのか。ご自身の明細と照らして判断できるように、順を追ってご説明します。
2026年度、医療費が値上がりします。
入院費「施設使用料」について、先に結論をお伝えします。

- 病室や設備を使うこと自体の費用は、入院料に含まれています。別に請求することはできません。
- テレビ代・冷蔵庫代は「日常生活上のサービス」として、自費で請求してよいものです。
- コンセントの電気代は入院料に含まれるので、請求できません。
- 「施設使用料」のように中身の分からない名目でまとめて取ることは、認められていません。
- そして使うか使わないかを患者さんが選べない一律徴収は、適切ではないとされています。
これらはすべて、厚生労働省が定めたルールに書かれています。記事の最後に出典を載せていますので、ご自身でも確認できます。
まず、病院に私が言われたことをそのまま書きます。
制度の話に入る前に、病院と私であった、実際のやりとりをご紹介します。同じような経験をされた方に、状況が伝わりやすいと思うからです。
入院前:「今ここでサインしてください。」

日帰り入院の前に、同意書を渡されました。A4の紙に、こう書かれていました。
☑ 施設使用料として1日500円がかかります。
この1行だけです。 内訳は書かれていません。使わない場合にどうなるかも書かれていません。
そして、こう言われました。
読んでチェックをつけて、サインしてください。同意書は持ち帰らずに、今ここでサインしてください。
「施設使用料」という言葉が気になったので、その場で尋ねました。
私:これは、この病院を使う料金ということですか?
病院:はい。
そういうものなのかと思い、その場で読んで、その場で署名しました。
日帰り入院は実際2~3時間。それでも施設使用料1日500円。
当日は、朝8時ごろに病院へ行きました。早ければ10時ごろ、遅くとも11時半までには帰らされます。滞在時間は2〜3時間ほど。
それでも「施設使用料1日500円」でした。
退院後、どうしても「施設使用料」が引っかかりました。
支払いを済ませて自宅に帰ってから、ずっと考えていました。
施設使用料は、入院料に含まれるものではないのか。 入院係をしていたとき、私は患者さんにそんな料金を請求したことがありません。
でも、断言できるほどの自信はありませんでした。
- 日帰り入院は、通常の入院とは別の扱いなのだろうか。
- 入院料の計算方法が変わって、請求できるようになったのだろうか。
- 請求の仕方が、私の知らない形になっているのだろうか。
内訳を聞く前に、まず自分で調べることにしました。ここから始まります。
調べて分かったこと:「病院を使う料金」は入院料に含まれています。

「病院を使う料金」の根拠は、診療報酬点数表そのものにありました。
まず当たったのが、「診療報酬点数表」。外来費、入院費など、健康保険で計算する医療費のことが全て書かれている本のことです。入院料等の冒頭に、こう書かれています。
第2部 入院料等 通則
1 健康保険法第63条第1項第5号及び高齢者医療確保法第64条第1項第5号による入院及び看護の費用は、第1節から第5節までの各区分の所定点数により算定する。この場合において、特に規定する場合を除き、通常必要とされる療養環境の提供、看護及び医学的管理に要する費用は、第1節、第3節又は第4節の各区分の所定点数に含まれるものとする。
そして、この診療報酬点数表の読み方を示した通知には、さらに具体的に書かれています。
第2部 入院料等 通知<通則>
1 入院基本料、特定入院料及び短期滞在手術等基本料は、基本的な入院医療の体制を評価するものであり、療養環境(寝具等を含む。)の提供、看護師等の確保及び医学的管理の確保等については、医療法の定めるところによる他、「病院、診療所等の業務委託について(平成5年2月15日指第14号)」等に従い、適切に実施するものとし、これに要する費用は、特に規定する場合を除き、入院基本料、特定入院料及び短期滞在手術等基本料に含まれる。
「通常必要とされる療養環境の提供」にかかる費用は、入院料に含まれる。厚生労働省がはっきりそう書いています。
病室、ベッド、寝具、病棟の設備。これらを使うこと自体を理由に、別途お金を取ることはできません。
私の記憶は間違ってなかった。そして私が医療事務(入院係)の仕事をしていたときから変わっていませんでした。
自分の入院医療費・明細を確認しました。

そのうえで、手元の明細を見ました。
| 項目 | 金額 |
| 入院料(有床診療所入院基本料+各種加算) | 1,158点 |
| 療養担当手当(入院) | 10点 |
| 入院ベースアップ評価料 | 165点 |
| 室料差額 | 0円 |
| 施設使用料 1日 | 500円 |
入院基本料は、きちんと計算されていました。この日は個室でしたが、自分で希望したわけではないので、室料差額(差額ベッド代)は0円です。
入院基本料を計算しているということは、療養環境の費用は保険適用分の医療費に含まれているということです。それなのに、さらに「病院を使う料金」を自費で取る。これは二重に取っていることになります。
私の場合、「有床診療所入院基本料」と書いてありました。「一般病棟入院基本料」など、病院によって異なります。
「施設使用料を請求されたら・・・?」まず確認してほしいこと。

ご自身の明細を見るとき、入院基本料が算定されているかどうかを確認してみてください。
- 入院基本料が算定されている → 療養環境の費用はそこに含まれています。
- 入院基本料が算定されていない(外来扱いになっている) → 扱いが変わることがあります。
日帰りの処置や検査でも、入院として扱われる場合と、外来として扱われる場合があります。
外来扱いの場合や、病棟に入らず短時間だけ使う専用のお部屋・回復室のような形の場合は、入院料(○○入院基本料)そのものが計算されないので、施設の利用料を自費で求められることがあります。
そのため「日帰りだから」ではなく、「入院基本料が計算されているかどうか」で見てください。時間の長さではなく、どういった料金で計算されているのかが分かれ目です。
「施設使用料」について、私が病院に尋ねたこと。

ここまで調べたうえで、あらためて病院に確認しました。
私:入院基本料を算定しているのに、施設使用料を別途請求できる算定根拠を教えてください。個室は希望していません。

このとき初めて、内訳が出てきました。
病院:テレビ、冷蔵庫、コンセントの利用料金です。 使う、使わないに関わらず、一律1日500円、患者様にご負担いただいています。
入院前に聞いた「この病院を使う料金。」とは、違う説明でした。

「いらないので使えないようにしてほしい。」とお伝えしたのですが、
病院:通電しているものなので、使えないようにすることはできません。 患者様からそういうご意見があったことは上には伝えますが、今どうこうすることはできません。
ということでした。
ここで論点がはっきりしました。「病院を使う料金」ではなく、「テレビ・冷蔵庫・コンセントの料金」なのだとしたら、それはまた扱いが違います。次から、その線引きをご説明します。
テレビ・冷蔵庫・コンセント、それぞれの扱い。

テレビや冷蔵庫、コンセント(電気代)など、自費(保険適用できないもの)は、厚生労働省から決められている別の通知が根拠になります。それが「療養の給付と直接関係ないサービス等の取扱いについて」という通知です。
これは「自費請求してもいいものについて」という意味です。
「テレビ代」など、自費で請求してよいもの。
2 療養の給付と直接関係ないサービス等
(1) 日常生活上のサービスに係る費用
ア おむつ代、尿とりパット代、腹帯代、T字帯代
イ 病衣貸与代(手術、検査等を行う場合の病衣貸与を除く。)
ウ テレビ代
エ 理髪代
オ クリーニング代
カ ゲーム機、パソコン(インターネットの利用等)の貸出し
キ MD、CD、DVD各プレイヤー等の貸出し及びそのソフトの貸出し
ク 患者図書館の利用料 等
テレビ代は、ここに名指しで書かれています。 ですからテレビ代の請求自体は、おかしなことではありません。
「冷蔵庫代」はテレビ代と同じように、自費OKでした。
通知に「テレビ代」はありますが、「冷蔵庫代」は書かれていません。
この点を地方厚生局に問い合わせたところ、「テレビ代が明記されており、冷蔵庫についても同様に日常生活上のサービスに係るものと考えられるため、費用を徴収することが可能。」という回答をいただきました。
「コンセント(電気代)」は、請求できません。
一方、コンセントについてはこちらです。同じ通知の別のところに、こう書かれています。
3 療養の給付と直接関係ないサービス等とはいえないもの
(1) 手技料等に包括されている材料やサービスに係る費用
ア 入院環境等に係るもの
(例)シーツ代、冷暖房代、電気代(ヘッドホンステレオ等を使用した際の充電に係るもの等)、清拭用タオル代、おむつの処理費用、電気アンカ・電気毛布の使用料 等
電気代は、名前を挙げて「請求できないもの」に書かれています。 しかも括弧の中に「充電に係るもの」とまで書かれています。
つまり、病室のコンセントを使ったことを理由に電気代を請求することは、できません。スマートフォンを充電したから、という理由も同じです。
【まとめ】テレビ代、冷蔵庫代、コンセントには、請求できないものが含まれていた。
| 病院に言われた内訳 | 扱い |
| テレビ代 | 自費で請求してよい(通知に明記) |
| 冷蔵庫代 | 自費で請求してよい(テレビ代と同様に考えられる) |
| コンセント(電気代) | 請求できない(通知に明記) |
3つのうち1つは、そもそも請求できないものでした。
「施設使用料」という名目そのものも少々問題あり。

「自費請求してもいいものについて」の通知文書には、自費の名前について、こう書かれています。
「お世話料」「施設管理料」「雑費」等の曖昧な名目での費用徴収は認められないので、改めて留意されたいこと。
これは「中身が分からない名前で、まとめて料金を取ってはいけません。」ということです。
私の場合、「施設使用料」というだけで、テレビ代、冷蔵庫代、コンセント(電気代)という中身がわからない状態だったことがよろしくありませんでした。(中身がわかったところで、コンセントも自費請求できないのですが。)
誤解しないでいただきたいこと。
これは「施設使用料という名前がダメ」という意味ではありません。
だめなのは「何に対するお金なのか分からない状態で、施設使用料としてまとめて取ること」です。
- どのサービスに対する料金なのか内訳が示されていて、
- 患者さんに説明があって同意を得ていて、
- 使うか使わないかを選べる。
この形になっていれば、名前が「施設使用料」でも問題はありません。大事なのは名前ではなく、中身が分かるかどうかです。
私の場合は、同意書に「施設使用料として1日500円」としか書かれておらず、病院スタッフさんに聞いたときは「この病院を使う料金」という回答。
実際には「テレビ代、冷蔵庫代、コンセント」で、施設使用料の内訳が分かる状態ではありませんでした。
自費を請求するときの厚生労働省が決めていること。

「自費請求してもいいものについて」の通知文書には、手続きについても書いてあります。
保険医療機関等は、その提供及び提供に係る費用の徴収に当たっては、患者の選択に資するよう次の事項に留意すること。
「患者の選択に資するよう」——これはつまり、「患者さんが選べるようにしなさい。」というのが大前提です。そのうえで、次のことが厚生労働省から病院に求められています。
| 厚生労働省が決めていること | |
| 1. 掲示 | 受付窓口や待合室など見やすい場所に、サービスの内容と料金を分かりやすく掲示すること。原則として、ウェブサイトにも掲載すること。 |
| 2. 説明と同意 | 内容と料金を明示した文書に、患者さんの署名をもらうこと。入院時の同意書でまとめて確認する形でもよいが、あとから別の費用が発生するときは、その都度あらためて同意書で確認すること。 |
| 3. 金額 | 社会的にみて妥当適切な金額であること。 |
| 4. 領収証 | 他の費用と区別して、内容が分かる領収証を発行すること。 |
施設使用料の同意は保留にできます。治療・診療は受けられますので、大丈夫です。

私は「同意書を持ち帰らずに、今ここでサインしてください」と言われました。
通知は「患者の選択に資するよう」と定めています。その場で読んですぐ署名を求められると、内訳を確認したり、必要かどうかを考えたりする時間がありません。
もし同じことを言われたら、「持ち帰って読んでから提出したいのですが」とお願いしてみましょう。急いで署名しなければならない書類ではありません。
そして、署名そのものを保留することもできます。
私も実際に、確認が済むまで同意を保留しました。「内容を確認したいので、この項目の同意は一度保留させてください。」とお伝えすれば通ります。
手術は、手術の同意書がないと、手術できません。麻酔は、麻酔の同意書がないと、麻酔をかけれません。
ですが、この施設使用料については、治療そのものの同意書とは違い、これは自費のサービスを買うかどうかの同意です。保留しても診療が受けられなくなることはありません。
ご自身が受けた説明と照らしてみてください。「掲示を見た覚えがない」「内訳を聞いていない」「その場で署名を求められた」「領収証に施設使用料としか書かれていない」という場合は、確認してよい状態だといえます。
テレビや冷蔵庫などの自費について書かれている文書には、2026年6月から始まった「病院のキャンセル料」についても書かれています。
「施設使用料」について厚生局に確認して、見直されるまで。
まず医療安全支援センターに相談しました。(ここは遠回りでした。)

最初に思いついたのが、都道府県などが設置している「医療安全支援センター」でした。医療に関する相談窓口です。
ところが、いただいた回答はこうでした。
診療報酬や費用に係る取扱いの適否につきましては、判断することができません。厚生局へご相談いただけますでしょうか。
医療安全支援センターは幅広い相談を受けてくれる窓口ですが、費用の請求が適切かどうかの判断はしていません。私も知らなかったところで、遠回りをしてしまいました。費用のことは厚生局が窓口です。
地方厚生局に問い合わせたら、丁寧な回答をいただきました。

あらためて地方厚生局にメールで問い合わせたところ、通知の該当箇所まで示した回答をいただきました。要点は3つです。
- テレビ・冷蔵庫 … 「日常生活上のサービスに係る費用」にあたるので、費用を徴収することは可能。
- コンセント … 「入院環境等に係るもの」にあたり、「電気代(ヘッドホンステレオ等を使用した際の充電に係るもの等)」が例示されていることから、別途徴収することはできない。
- 一律徴収 … 通知は「患者の選択に資するよう留意すること」としているため、患者が使用しないという選択ができない取扱いである場合には、不適切であると考えられる。
私が疑問に思っていたことに、通知の条文で答えていただいた形です。
病院も「厚生局に確認するので、時間をください。」とのこと。

この回答を印刷して、病院に見せしました。最初のお返事はこうでした。
監査も入っていますし、他の病院でも一律で徴収していますから、間違いないはずです。厚生局に確認しますので、2週間ほどお時間をください。
「他の病院もやっている」「監査で指摘されなかった」は、残念ながら根拠になりません。保険のルールは全国共通です。他院の運用や、これまで指摘がなかったことは、その請求が正しいことの証明にはなりません。
ただ、病院が自分たちも厚生局に確認すると言ってくれたのは、前向きな対応でした。
結果、同意書の見直しと返金対応となりました。

その後、病院から連絡がありました。「厚生局に確認して、院内の会議で同意書の変更を協議した。」とのことでした。
以下、病院の最終的な対応のまとめです。
- 同意書の内訳からコンセントが削除されました。
- 最初の改訂案は「テレビ・冷蔵庫・無料インターネット環境」となっていました。1日500円かかるのに「無料」はおかしいのではないかと伝えたら、「Wi-Fi環境」に直してくれました。
- すでに支払っていた分は返金されました。
私が強く抗議したわけではありません。「厚生局にこう言われたのですが」とお伝えしただけです。
病院はそれを受け止めて、自分たちで確認して、直してくれました。誠実な対応だったと思っています。ありがとうございます。
「使えないようにできない」は、できました。

ひとつ、書いておきたいことがあります。
窓口では「通電しているものなので、使えないようにすることはできません。」と言われました。
ところが、同意を保留した次の日帰り入院のとき、テレビと冷蔵庫には「使用できません」という紙が貼られ、電源が入っていませんでした。請求もありませんでした。
できないと言われたことが、実際にはできたのです。
正直、「嘘をつかれた」ような感覚。だけど窓口の方も、本当にそう思っていたのだと思います。運用として「そうなっている」から、そう答えただけなのでしょう。(私は病院の運用が「使えないようにできない」となっていたと信じたい。)
お伝えしたいことは、「できません」と言われても、それが最終的な答えとは限らない。ということです。このことは、知っておいて損はないと思います。
ただし、すべてが解決したわけではありません。

正直にお伝えしておきます。同意書は今も「施設使用料(テレビ・冷蔵庫・Wi-Fi環境)として1日500円」という形で残っています。そして、
- チェックボックスは1つだけです。
- 「使わない権利があります。」といった一文は、入りませんでした。
- 「不要ならチェックをつけなくてよい」ことは、窓口での口頭説明に任されています。
「使用する/使用しない」で選べるチェックボックスにできないかとお願いしたのですが、「他の同意項目とそろえたほうが分かりやすい」とのことで、この形になりました。
「チェックしない」=「使用しない」を選んだ。ということです。なので私は、施設使用料の欄にチェックをつけない同意書を取り直してあります。
つまり「患者が選べる形」という点では、まだ十分とは言えません。
それでも私は、ここで十分だと思っています。請求できないものが削除され、内訳がはっきりして、返金もされました。完璧を求めるより、おかしいところが直ればいい。そう考えています。
※ Wi-Fiについて補足です。通知には「Wi-Fi」という言葉は出てきませんが、「日常生活上のサービス」の例として「パソコン(インターネットの利用等)の貸出し」が挙げられています。ですからインターネット環境の提供も、テレビや冷蔵庫と同じ整理になると考えられます。
おかしいと思ったときは、確認してみてください。
病院が悪いのではなく、制度が細かく変わるからです。

ここが、いちばんお伝えしたいことです。
病院の医療費のルールは、2年ごとに見直されます。 そのうえ、その2年のあいだにも通知は細かく変わり続けています。数え切れないほどの決まりごとがあって、しかも中身が動き続けているのです。
正直に言えば、入院の会計と精算を担当していた私も、そのすべてを分かっていたわけではありませんでした。
そして病院には、その病院のやり方があります。開院したてでもない限り、「この書類はこう扱う」という運用がすでにできあがっていて、日々の仕事はその流れに沿って進みます。なぜそうなっているのかを、一人ひとりが確かめ直す機会は、そう多くありません。
今回の施設使用料も、そのひとつだったのだと思います。私が受診した病院では、外来で、看護師さんや薬剤師さんが同意書の説明をしていました。入院料に何が含まれるかは、その方たちの担当分野ではありません。
これは、病院で働く方を責める話ではありません。窓口に立つ方が入院料の中身まで把握しているとは限りませんし、そこまで求められる立場でもありません。私が疑問を持てたのは、たまたま入院の請求を担当していたからです。
ですから、「聞いてみる」のは失礼なことではありません。 病院を疑うということでもありません。ただ確認するだけです。私が確認したときも、病院は嫌な顔ひとつせず、自分たちで調べ直してくれました。
むしろ窓口で強い言い方をしてしまうと、担当の方が身構えてしまって、かえって話が進まなくなります。「教えていただきたいのですが」という聞き方のほうが、結果的に早く解決します。これは入院係だった経験からも、患者として確認した経験からも、そう思います。
ステップ1:明細と同意書を見る。

- 入院基本料が算定されているか?(算定されていれば、療養環境の費用は含まれています。)
- 名目 … 中身の分からない名前になっていないか?
- 内訳 … 何に対する料金なのかが書かれているか?
- 署名 … 内容と料金が示された文書に、自分が署名しているか?
ステップ2:病院の窓口で算定根拠を聞く。
いちばん早いのはここです。聞き方の例です。
この施設使用料の内訳を教えていただけますか。
内訳を聞いたうえで、使っていないものが含まれていたら、
使わない場合はどうなりますか。
さらに踏み込むなら、私が実際に使った聞き方です。
入院基本料を算定しているのに、施設使用料を別途請求できる算定根拠を教えてください。
ステップ3:納得できなければ、地方厚生局に「メールで」問い合わせる。
費用の請求が適切かどうかを判断しているのは、地方厚生局です。お住まいの地域を管轄する厚生局に問い合わせます。
電話ではなく、メールでの問い合わせをおすすめします。 理由は2つあります。
- 記録が残ります。 電話だと「言った・言わない」になりますが、メールなら回答が文章のまま手元に残ります。
- そのまま病院に見せられます。 次のステップで効いてきます。
「◯◯厚生局」で検索すると、ホームページに問い合わせフォームがあります。私のときは、通知のどこに書かれているかまで示した、とても丁寧な回答をいただきました。
⚠️ 医療安全支援センターでは、費用の適否は判断していません。 費用のことは厚生局へ、と覚えておいてください。
ステップ4:回答を印刷して、病院に見せる。
これがいちばん効きました。
厚生局からの回答メールを印刷して、「厚生局に確認したところ、こういう回答でした。」とお見せするだけです。 自分の言葉で説明する必要はありません。
自分の意見として伝えると議論になりますが、公的機関の回答をそのまま見せる形なら、対立になりません。病院も「では確認します。」と動きやすくなります。
よくある質問。
- 同意書にサインしてしまいました。もう払わないといけませんか。
- 署名したから何でも有効、というわけではありません。通知は、内容と料金が明示された文書に署名を受けることを求めています。内訳が示されないまま署名した場合は、その前提が満たされていないことになります。
まずは内訳を確認して、納得できなければ病院にご相談ください。
- 「今ここでサインしてください。」と言われました。
- 持ち帰って読みたいとお願いしてよいと思います。 通知は「患者の選択に資するよう」と定めていますので、内容を確認する時間があってしかるべきです。
その項目だけ同意を保留することもできます。 私も実際に保留しました。治療そのものの同意書とは違い、これは自費のサービスを買うかどうかの同意です。保留しても診療が受けられなくなることはありません。
- テレビを見ていないのに、テレビ代を取られました。
- 使わない選択ができない形での一律徴収は、適切ではないと考えられます。 ただし、テレビカードのように「使った分だけ買う」方式であれば、選べる形ですので問題ありません。
- 「他の病院でもやっています。」と言われました。
- 他院の運用は、根拠になりません。 保険のルールは全国共通です。同じように、「これまで監査で指摘されていない」ことも、その請求が正しいことの証明にはなりません。
判断しているのは厚生局ですので、納得できなければそちらに確認するのが確実です。
- 日帰り入院でも入院料はかかるのですか。
- 入院として扱われれば、入院基本料が算定されます。 ただし、同じ日帰りの処置でも外来として扱われる場合があり、そのときは入院料そのものが算定されません。ご自身の明細で確認してみてください。
- 差額ベッド代とは違うのですか。
- 違います。差額ベッド代(正式には特別療養環境室料)は、個室などを希望した場合の費用で、別の決まりで定められています。患者さんが希望していない場合は、原則として請求できません。
私の場合も個室でしたが、自分で希望したわけではないので、明細の室料差額は0円でした。今回お話ししているのは、テレビや冷蔵庫といった日常生活上のサービスの話です。
- 過去に払った分は、返金してもらえますか。
- 必ず返金されるとは限りません。 私の場合は病院が確認したうえで返金してくださいましたが、対応は病院によって異なります。
まずは内訳の確認からです。返金を求めることを目的にするより、「何に対するお金なのかを知る」ことから始めるほうが、結果的に話が進みやすいと感じています。
「施設使用料1日500円」のまとめ。

- 療養環境(病室・寝具・設備)にかかる費用は、入院料に含まれています。 まず明細で入院基本料が算定されているか確認してください。
- テレビ代・冷蔵庫代は自費で請求してよいものです。
- 電気代・コンセントは請求できません。(通知に名指しで書かれています。)
- 「お世話料」「施設管理料」など、中身の分からない名目でまとめて取ることは認められていません。
- 病院には、掲示・説明と署名・妥当な金額・区別した領収証が求められています。
- そして大前提として、患者さんが選べるようにすることが求められています。
私は入院係の経験があったから、疑問を持って調べることができました。でも本来、専門知識がなくても確認していいことです。制度は細かく変わり続けますし、病院の運用が追いついていないこともあります。
おかしいと思ったら、責めるのではなく、教えていただく。それだけで、たいていのことは分かります。
なお、自費で払った分は高額療養費の対象になりません。 高額療養費は保険がきく分の医療費が対象です。ここも混同しやすいところですので、あわせて覚えておいてください。
→高額療養費が2026年8月から引き上げ!限度額はいくら?はこちら
この記事の根拠。
1. 入院料に何が含まれるか。
※しろぼんねっとから引用させていただいております。しろぼんねっとは、診療報酬点数表をインターネット上に掲載しているサイトです。
2. 自費で請求してよいもの・いけないもの。
※2026年8月19日に原文を確認しています。制度は改正されることがありますので、最新の内容は上記の原文でご確認ください。
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