限度額適用認定証の申請が間に合わなかったり、還付手続きをするにも3割負担の金額が高くて用意できないとき、全国健康保険協会に加入の患者さんは「高額医療費貸付制度」を利用できます。
高額医療費貸付制度は、全国健康保険協会が高額療養費の8割相当のお金を無利子で貸してくれる制度です。
貸付制度と合わせて還付の申請もしますので、借りたお金は払い戻し金額から差し引きされて返金するようになっています。そして高額療養費の残り2割分が患者さんに払い戻しされます。
限度額適用認定証が始まってからは、この高額医療費貸付制度の出番は少なくなりましたが、2025年も有効です。
全国健康保険協会の保険証をお持ちの患者さんは、3割負担のお支払いに困ったときには、高額医療費貸付制度の利用をご検討ください。
この記事では、高額医療費貸付制度の概要や流れ、全国健康保険協会が貸してくれる金額について、ご説明します。はじめて聞く制度で難しく感じると思いますが、ゆっくり読み進めていただければ幸いです。
高額医療費貸付制度とは、全国健康保険協会がお金を貸してくれる制度です。
高額医療費貸付制度は、3割負担の医療費が高額で支払えないとき、一時的にお金を借りることができる制度です。
高額療養費の還付手続きをするには、病院に3割負担で医療費を支払った領収書が必要になります。3割負担の金額が高額すぎて、分割払いして3割負担を全額支払い終わってから、還付手続きをするとなれば時間がかかります。
そして高額療養費の還付手続きには、診療月から2年以内という期限(時効)があります。
3割負担の金額が300,000円で、1か月1万円ずつ病院に支払ったら、2年6か月かかります。すると3割負担のお支払いが終わったときには時効が過ぎて、還付手続きができなくなります。
高額医療費貸付制度は、還付手続きが遅れたり、特に時効で高額療養費(還付手続き)ができないということがないように、3割負担の中でも、高額療養費分の一部(8割相当)のお金を無利子で貸しますよ。という全国健康保険協会の制度です。
還付手続きをすれば高額分が払い戻されるとはいえ、その高額分が高すぎて一時的にでも用意できないこともあります。銀行や消費者金融に借りれば高い利息がついてしまいます。
この高額医療費貸付制度も、お金を借りることに変わりはありません。ただ、無利子ですし、後で返金してもらう金額を少しだけ先にもらうようなものです。(詳しくはこのあと解説します。)
適当なところでお金を借りるより安心安全なので、全国健康保険協会の患者さんは、高額医療費貸付制度をぜひご利用ください。
高額医療費貸付制度の流れ。借りたお金は還付金から差し引きで返済されます。

高額医療費貸付制度の流れは図をご覧の通りです。
- 病院から患者さんのところへ、3割負担の請求書がきます。
- 患者さんは全国健康保険協会へ、貸付制度と還付の申請を同時にします。
- 全国健康保険協会から患者さんに高額療養費の8割相当のお金が貸し出されます。
- 患者さんは病院へ3割負担の医療費を支払います。
- 【3か月後・・・】全国健康保険協会から還付金の2割が振り込まれます。借りたお金8割は還付金から差し引かれて、自動的に返金されます。
となります。
④から⑤のところ、還付手続きには3か月くらい時間がかかるので、3割負担の医療費を病院に支払った後、少し時間があいてしまいます。
貸付制度と還付(高額療養費)を同時に申請するので、ちょっと通常とは違う感じがして不安に思うかもしれません。
ですが、手続きはきちんとできていますので、大丈夫です。3か月後、高額療養費の2割が払い戻されますので、ご安心ください。
貸付制度では高額療養費の8割相当のお金を借りることができます。ただ、この借りたお金は、⑤の還付金で差し引きされるので、患者さんが全国健康保険協会にお金を返す手間がありません。
イメージとしては、還付手続きをすれば10万円が払い戻される。でも貸付制度で8万円借りた。3か月後、払い戻し金額は10万円だけど、先に8万円借りていたから差し引かれて2万円が払い戻された。という感じです。
高額医療費貸付制度で借りられるお金「高額療養費の8割分」とは、いくら?

医療費を10割全体でみた図がこちらです。
全国健康保険協会の高額医療費貸付制度では、高額療養費のうち、【8割相当】のお金を借りることができます。
たとえば、「3割負担で300,000円だった。高額療養費は、区分ウ。」という例でお話しますね。
医療費の10割が1,000,000円、そのうち患者さんの3割負担が300,000円だった場合、高額療養費(区分ウ)を使うと、300,000円→87,430円になります。※区分ウの計算式:80,100円+(総医療費-267,000円)×1%.
高額医療費貸付制度は、「高額療養費の8割相当のお金を全国健康保険協会が患者さんに貸しますよ。」という制度です。高額療養費とは、3割負担の金額と高額療養費を使ったあとの自己負担限度額との差額のことです。
この差額(高額療養費)の8割相当を、全国健康保険協会から借りることができます。
医療費を10割全体でみた図のうち、8・9・10が3割負担の30万円。さらにすぐ下、右側(黄色)の「患」は患者さんの自己負担限度額。左側(青色)が差額の「高額療養費」。
高額医療費貸付制度では、この左側の「高額療養費」から、8割相当のお金を貸してくれることになります。

3割負担部分を拡大した図がこちらです。
8・9・10は、医療費を10割全体でみた図から、患者さんの3割負担部分です。また、その患者さんの3割負担のうち、左側(青色)が高額療養費、右側(黄色)が患者さんの自己負担限度額です。
3割負担で300,000円の場合、患者さんの自己負担限度額は87,430円なので、差額212,570円が高額療養費の金額になります。
※300,000円(上段黄色の8・9・10)-87,430円(下段黄色の限度額)=212,570円(下段青色の1から10まで)
さらに、この212,570円(高額療養費)の8割相当なので、170,056円が高額医療費貸付制度で全国健康保険協会が貸してくれるお金になります。
※212,570円(下段青色の1から10まで)×0.8(8割)=170,056円(下段青色の1から8まで)
※【8割相当】なので、8割は170,056円だけど170,000円など、端数がでた場合、四捨五入や切り捨て、切り上げされる可能性もあります。
残り2割(42,514円)は、自己負担限度額(87,430円)と一緒に自分で用意します。
※212,570円(下段青色の1から10まで)-170,056円(8割、下段青色の1から8まで)=42,514円(2割、下段青色の9・10)
全国健康保険協会から借りたお金(170,056円)と、自分で用意したお金(129,944円)を合わせて、病院に3割負担のお支払いしてくださいね。ということです。
170,056円(8割)は全国健康保険協会から借りて、42,514円(2割)は患者さん自身が用意しますよね。高額医療費貸付制度の申請するとき、同時に還付手続きの申請もします。
なので、3か月くらい後に還付手続きが終わったら、本来212,570円払い戻されるところ、170,056円(8割)は差し引きされて、42,514円(2割)だけ患者さんのところに払い戻されます。
3割負担のお支払いが難しいとき、「高額医療費貸付制度」の利用をご検討ください。
高額医療費貸付制度は、あまり知られていないため、慣れないことと思います。実際、高額療養費の限度額適用認定証が始まってからは、私も耳にしなくなりました。
ですが全国健康保険協会のホームページにも掲載されていますし、実在する、患者さんが利用できる制度です。
医療費が高額になると予想できるときは限度額適用認定証を事前に手続きできますし、自己負担限度額を超えた高額分が立て替えられる程度の金額なこともあります。なので、高額医療費貸付制度を利用する機会は少ないでしょう。
でも、限度額適用認定証の手続きが間に合わなかったとき、3割負担の医療費が高額すぎて一時的なことでもお支払いが難しいとき。困ったときには、【高額医療費貸付制度】の利用を選択肢のひとつに入れてみてください。
記入書類が増えて面倒かもしれません。貸付制度の内容が複雑で理解が難しいかもしれません。
それでも時間をかけて分割払いをして還付手続きをしたり、還付手続きの期限(時効)を過ぎて還付手続きができなくなることを考えたら、高額医療費貸付制度を利用した方が、3か月後には払い戻しも終わりますので、早く落ち着くのではないでしょうか。
高額医療費貸付制度は、全国健康保険協会の制度です。全国健康保険協会(協会けんぽ)の保険証をお持ちの患者さんは、保険証の都道府県支部に問い合わせください。
保険証や健康保険などについての記事は他にもあります。参考にご覧ください。
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