高額療養費は、同じ健康保険に加入していれば、ご家族全員分を合わせて、一家族で限度額までの負担にすることができます。
→「え、家族の医療費を合わせて高額療養費の手続きをできるの?」という方はこちらからご覧ください。
「高額療養費の制度や世帯合算という仕組みは聞いたことがある。でもやり方、申請書類の書き方がわからない。」という患者さんやご家族がいます。
そこで、今回は「家族の医療費をまとめて高額療養費手続きにしたい。」、「高額療養費の申請書で、世帯合算の書類の記入方法を知りたい。」という患者さん、ご家族へ。
家族全員分の医療費を合わせる、「高額療養費の世帯合算で使う書類」と、申請書の書き方をご説明します。
患者さんの健康保険によって、申請書の書き方が変わります。この記事で記入例に使っている書類はこちらです。
- 健康保険が、「全国健康保険協会(協会けんぽ)」に加入している患者さん。
- 保険証の区分が、「本人(被保険者)」、「家族(被扶養者)」の患者さん。
このページでは、家族の医療費を合算して、高額療養費の手続きをする書き方を、全国健康保険協会を例に解説していきます。
目次
高額療養費の還付申請する患者さんの保険証をご用意ください。
出典元:健康保険証(被保険者証)の交付について
このページでは、全国健康保険協会(協会けんぽ)で、家族全員分の医療費をまとめて、高額療養費の手続きをする書類の書き方をご説明しています。
健康保険は、社会保険で一番加入されているので「全国健康保険協会」、青いカードタイプの保険証です。保険証の区分は、「本人(被保険者)」の患者さんと、「家族(被扶養者)」の患者さん。
高額療養費の還付申請の書類を記入するときは、上に書いた患者さんの健康保険証をご用意ください。
※同じ家に住んでいても、戸籍や事実上は家族だとしても、別の健康保険に加入している方は、高額療養費の世帯合算は手続き対象外です。
本人(被保険者)の保険証でいう、「氏名(協会太郎)」
家族(被扶養者)の保険証でいう、「被保険者氏名(協会太郎)」
青いカード型の保険証で、本人の保険証の「氏名」と、家族の保険証の「被保険者氏名」が、一致していることをご確認ください。
高額療養費の還付手続きをする期間の領収証を、病院も、薬局も、全員分すべて集めます。
今回のご家族の医療費を合わせる手続きは、「高額療養費の還付申請」になります。
高額療養費の還付手続き(償還払い)は、病院で支払った3割負担の「領収証」が、申請するご家族全員分、必要です。病院に「3割負担でお支払い済み」ということがわかれば、形や名称が違っても大丈夫です。
請求書兼領収証の場合、「領収印」が押されていることをご確認ください。領収の印鑑がなければ、請求書なので「お支払いしていない」、ということになります。
また、領収証に記載されている3割負担の医療費と、協会けんぽに請求された医療費が、不一致だと申請しても審査で通らなかったり、確認のため時間がかかることもあります。
検査やお薬で医療費が追加になったり、お薬の日数変更などで返金されたなど、医療費の変更があった場合は、「最新の領収証」をご用意ください。
高額療養費の還付手続きに使う申請書はこちら。協会けんぽ公式サイトからダウンロードできます。
高額療養費の還付申請をするときは、こちらの書類です。
「健康保険 被保険者、被扶養者、世帯合算 高額療養費 支給申請書」という名称の申請用紙を使います。高額療養費の還付手続きをする申請書は、A4サイズで2枚綴りになっています。枚数も同時に確認しておきましょう。
この高額療養費の還付申請に使う書類は、全国健康保険協会の公式サイトからダウンロードできます。ご自宅のプリンターやコンビニなどで、印刷してご使用ください。
また、2枚目の申請内容(画像:右側の書類)は、病院に3割負担でいくら支払ったのか?、受診した期間はいつからいつなのか?を記入する欄があります。
申請内容の部分は、病院ごと、調剤薬局ごとに、ひとりずつ、書いていきます。
2名以上で外来医療費だと、病院と調剤薬局で、4か所分必要です。記入欄がたりないときは、2枚目だけコピーして使います。
「申請書類に何か所分を書くのか?」数えて、初めから必要な枚数分を用意しておくと、スムースに進められます。二度手間、三度手間にならずに済みます。
「2枚目が足りなくなったとき、コピーして使うこと」については、こちらのページにも書いてあります。
→協会けんぽの高額療養費支給申請書、申請内容が4か所以上の時の書き方。はこちら
今回、家族の医療費を合わせて高額療養費の手続きをする申請用紙で記入するところは、赤枠で囲った部分です。
1枚目は、画像の左側。「被保険者(申請者)情報」と「振込先指定口座」。
2枚目は、画像の右側。「被保険者氏名」と「申請内容」。
その他、患者さんや申請時の状況などによって、別の記入項目もあります。記入欄ごとにご説明していきますので、心配なさらないでください。
それでは、以下で順番にご説明していきます。1つずつ記入してみましょう。
健康保険高額療養費支給申請書、1枚目の書き方。
では、家族の医療費を合算する高額療養費の書類を、全国健康保険協会の申請用紙で書いていきます。
1枚目の記入内容は、健康保険の加入情報と高額分を払い戻すときの振込先についてです。
高額療養費の申請書1枚目で使う保険証は、「本人(被保険者)」の方の保険証です。「家族(被扶養者)」の方の保険証は、2枚目で使うので、そのまま用意しておきます。
わかりやすく、記入しやすいように、高額療養費の申請書と本人(被保険者)の健康保険証を並べると、書きやすくなります。
鉛筆で薄く下書きをしてから清書しても大丈夫です。焦らず、ゆっくり落ち着いて記入してみてください。
【被保険者情報】被保険者証の「記号」・「番号」。
それでは、被保険者証から記入してみましょう。
被保険者証の記号・番号は、こちらです。本人(被保険者)の保険証で、上の方にあります。
記号は数字8ケタ、番号は右側の数字を、高額療養費の書類に書きます。番号に数字の桁数はありません。1ケタ~5ケタなど、患者さんによって変わります。
また、番号の右側にある(枝番)00は、記入しないので、ご注意ください。
【被保険者情報】氏名(カタカナ)、氏名。。
氏名(カタカナ)、氏名は、こちらです。
保険証にも「氏名」と記載されているお名前になります。被保険者本人、会社で働いている方、世帯主の方ですね。
保険証の氏名を、漢字と、フリガナをカタカナで書きます。
【被保険者情報】生年月日。
生年月日は、こちらです。会社で働いている方、世帯主の方の誕生日になります。
昭和は1、平成は2、令和は3と、和暦を番号で、右のマス内に年月日を数字で書いていきます。
【被保険者情報】郵便番号・住所・電話番号。
郵便番号・住所・電話番号は、氏名に書いた方の住所や電話番号を書く欄です。
郵便番号は、ハイフンなしで、数字7桁。
住所は、都道府県名を書いて、4つの都道府県から当てはまるものに〇(丸)をつけます。右側に続けて、市区町村や番地、建物名などを記入します。
電話番号は、自宅や携帯など繋がる番号なら、どちらでも大丈夫です。
※保険証には住所等が掲載されていないので、世帯主の方の現住所を書きましょう。
【振込先指定口座】高額分はどこの銀行に返金してもらうのか。
振込先指定口座は、高額分になった医療費を振込で返金してもらうための銀行口座です。
空白や記入漏れなどがあれば、全国健康保険協会から連絡がきます。忘れずにご記入ください。
原則は、先程書いた申請者(本人(被保険者))さん名義の口座です。(このページでいうと、協会太郎(キョウカイ タロウ)さんの銀行口座になります。)
口座名義の記入欄はありませんが、申請者(世帯主の方)の銀行口座を書きましょう。
金融機関名称や支店名を書き、それぞれ銀行や金庫、本店や支店など該当するところに〇(丸)をつけます。口座番号は左詰めで記入していきます。預金種別は普通預金のみなので、何も書かなくても大丈夫です。
保険証の記号・番号がわからないときはマイナンバーで高額療養費の還付手続きができます。
保険証(被保険者証)の記号や番号がわからないときは、患者さんのマイナンバーでも申請することができます。
還付手続きの申請書1枚目の下部、【2ページ目に続きます。>>>】と【社会保険労務士の提出代行者名記入欄】の間です。
「保険証が手元になくて申請できない・・・。」、「保険証の記号・番号がわからないんだけど、どうしたら!?」という患者さんは、下線部の上にマイナンバーの番号12桁を記入することで還付手続きをできます。
健康保険高額療養費支給申請書、2枚目の書き方。
続きまして、家族の医療費を合算して、高額療養費の申請をする、還付手続きの書類。2枚目の記入内容は、病院で支払った3割負担の医療費についてです。
2枚目は、病院の領収書を見ながら、還付手続きの申請書を書きます。
生年月日は領収書に書かれていないことが多いため、このページでは保険証を例にご説明しています。保険証は、本人(被保険者)と家族(被扶養者)と、両方ともご用意ください。
では、1か所ずつ、ひとりずつ、1病院ごと、1調剤薬局ごとに、書いていきます。
【被保険者氏名】患者さんのお名前を書きます。
還付手続きの書類2枚目は、まず一番左上にある被保険者氏名を書きます。
本人(被保険者)の保険証や、還付申請書類1枚目で被保険者情報の氏名に書いたお名前と同じです。
被保険者氏名には、本人(被保険者)さんのお名前を記入します。
【申請内容】診療年月。
では次に、申請内容を書いていきます。
①診療年月は、いつ(令和何年何月分)の高額療養費を申請するのか?です。高額療養費の手続きをする「年月」を和暦(令和)で書きます。
病院の領収書でいうと、請求期間や診療期間のことです。
また、何日から何日か?ということは、後(⑤療養を受けた期間)で記入します。なので、ここでは「令和何年何月分か?」だけを書きます。
1か月ごとの申請になりますので、月末から翌月までの入院など、月をまたいで入院した場合は申請書も2枚になります。
【申請内容】受診者氏名。
②のうち、受診者氏名は、誰の申請をするのか?です。
なので、患者さんのお名前を書きます。
病院の領収書では、患者氏名のところにあるお名前です。
【申請内容】受診者生年月日。
②のうち、受信者生年月日は、患者さんのお誕生日(同じ②の受診者氏名に書いた方の生年月日)です。
1枚目の被保険者情報に書いたように、昭和は1、平成は2、令和は3と和暦は番号で、マス内には年月日を数字で書きます。
病院の領収書には、患者さんの生年月日は載っていないことが多いため、生年月日については保険証を例にしています。
【申請内容】医療機関(薬局)の名称・所在地。
③の医療機関(薬局)の名称・所在地は、3割負担の医療費が高額になった病院や調剤薬局の名所と住所です。
医療機関(薬局)の名称は、病院や調剤薬局の名前を書きます。
医療機関(薬局)の所在地は、病院や調剤薬局の住所を書きます。
名称は普段は略称などで呼んでいても、健康保険(全国健康保険協会)の方にはわかりません。
病院の名称も住所も、領収書の通りに書いてある通りに記入していきます。
【申請内容】病気・ケガの別。
④の病気・ケガの別は、医療費が高額になった通院入院内容は、病気か?ケガか?ということです。そのままですが・・・。
たとえば、癌で、抗がん剤や放射線治療などの治療をして、医療費が高額療養費の限度額以上になった場合は、「病気」の「1」を書きます。
また、階段から落ちて足を骨折したときに、緊急手術をして高額になった。リハビリで限度額を超えた。というような場合は、「ケガ(怪我)」の「2」を書きます。
もし、病気かケガか、ご自身やご家族ではよくわからなければ、病院で医師や看護師にご確認してみてください。
【申請内容】療養を受けた期間。
⑤の療養を受けた期間は、1か月のうちで何日から何日まで受診して医療費が高額になったのか?ということです。
9月26日入院、28日退院のように、同じ月内に入院して退院した場合は、領収証の期間の通り日付だけ書きます。
高額療養費の還付申請は、1か月毎なので、4月26日~5月10日までなど、月をまたいで入院していたら2か月分(申請書の2枚目を2枚)記入します。
4月分の申請は「4月26日~30日」、5月分の申請は「5月1日~5月10日」となります。
外来(通院)分を申請する場合は、5月5日、12日、19日、26日、だとしたら、「5月5日~5月26日」というように記入します。
【申請内容】支払額。
最後に⑥の支払額は、病院でいくら支払ったのか?医療費を書きます。
ただし、健康保険を使って支払ったのはいくらだったのか?です。
請求額合計やお支払い金額合計には、入院中の食事代や病衣や診断書、個室料金などの自費分も含まれています。ですが、食事代や自費分については、高額療養費の対象外になるのです。
なので、支払った金額のうち、3割負担分はいくらだったのか?健康保険の対象分はいくらだったのか?を記入します。実際に病院の会計窓口でお支払いした金額ではないので、ご注意ください。
領収書はいろいろな種類がありますが、例でいう領収書の保険分のうち「負担額」のところが3割負担の医療費になります。
点数表示や円表示、10割負担や3割負担と、いろいろな書き方がされていて、わかりにくいかとは思いますが、どうか確認してみてください。
そして、3割負担のお支払いした金額がわからないときは、病院の受付会計窓口でお尋ねください。
【申請内容】申請内容の②~⑥までの項目を、医療費が高額になった全員分記入します。
家族の医療費を合わせて高額療養費の申請をするときは、還付手続きの申請書2枚目の申請内容「②受診者氏名」から「⑥支払額」までを、縦に全員分記入します。
申請内容の①診療年月は、1か月分をまとめる家族全員の共通項目のため、1回書いたら終わりです。
記入欄は、1枚につき、3か所分まで。なので、4か所以上あるときは、2枚目だけをコピーして書きます。
たとえば、夫婦で外来受診分と調剤薬局分がある場合、4か所分になります。そういったときには、申請書1枚目が1枚、申請書2枚目が2枚で、合計3枚になります。
- 申請書1枚目、被保険者情報(健康保険の情報)や還付の振込銀行口座。
- 申請書2枚目、その1、夫の病院(外来受診)分、夫の調剤薬局分、妻の病院(外来受診)分。
- 申請書2枚目、その2、妻の調剤薬局分。
2枚目をコピーして記入することは、こちらのページでご説明しています。ご記入の参考にしてください。
→協会けんぽの高額療養費支給申請書、申請内容が4か所以上の時の書き方。はこちら
【申請内容】過去1年間で高額療養費を使った場合、最近の3回分を書きます。
⑦は、過去1年間で、高額療養費を使ったことがあるのか?の確認項目です。
はじめての高額療養費なら、空欄のまま何も書かなくて大丈夫です。
高額療養費は、過去1年以内に3回以上利用していると、4回目以降は患者さんの負担金額がさらに減額されます。
協会けんぽ(健康保険側)でも確認しますが、患者さんからの自己申告があるとわかりやすく、見落とし防止になるため患者さんの記入欄もあります。
この過去1年とは、高額療養費を申請する月を含めた12か月間のことをいいます。
今回の例ですと、診療年月が令和4年9月分の申請なので、令和3年10月から令和4年9月までの間で高額療養費を使った月のことです。
令和4年5月、6月、7月と利用していたら、上の記入例のように書きます。もし、令和3年11月や令和4年1月、2月があっても、記入しなくても大丈夫です。
診療年月から1年以内に高額療養費を使った3回分(3か月分)だけを記入します。
- 「高額療養費を使ったことがない。」
- 「高額療養費は1~2回使ったことがある。」
という患者さんは、何も書かずに申請します。
【情報照会】低所得者や住民税非課税世帯の確認項目です。
最後に、「情報照会」は、低所得者や住民税非課税世帯の確認するための項目です。
課税世帯(一般課税世帯や上位所得者)の患者さんは、空欄のまま申請します。
低所得者や住民税非課税世帯の患者さんは、高額療養費の区分で、課税世帯の患者さんよりも医療費が安くなります。また、区分オの患者さんは食事代も減額されます。
「住民税非課税世帯」など、高額療養費で低所得者に該当することを、患者さんからの自己申告を元に、健康保険から市区町村等に確認をします。
なので、⑧非課税等は、低所得者や住民税非課税世帯の患者さんは、「✓(レ点でチェック)」を入れます。
非課税世帯など、高額療養費の低所得者かの確認には、原則マイナンバーを使って行います。が、患者さんご自身で選べます。
- マイナンバーを使用した確認をするには「郵便番号」を記入する。
- マイナンバーを使用した確認をしないには「非課税証明書」を添付する。
⑨被保険者郵便番号は、マイナンバーを使って確認する患者さんが「郵便番号」を書くところです。患者さん本人の郵便番号、申請書1枚目の被保険者情報で書いた郵便番号を書きます。
⑩希望しないは、マイナンバーを使って確認をしてほしくない患者さんが「✓(レ点でチェック)」を入れるところです。チェックを入れたら非課税証明書等の必要な証明書類を添付して申請します。
医療費
家族全員分の医療費をまとめて、高額療養費の手続きをする申請書の書き方は以上です。
記入できたらあとは申請をご加入の全国健康保険協会の都道府県支部にお送りください。
書類は2枚もあり、保険証や領収書、申請書の聞きなれない項目に戸惑われたことと思います。患者さんやご家族の方がすべて書けていたら幸いです。
「この高額療養費の申請書はどこでもらえるんだろう?」「家族全員分を合算して高額療養費の請求をしたい。」という方は、全国健康保険協会の公式サイトからダウンロードです。
高額療養費の回数や計算方法については別の記事でご説明しています。こちらのページにまとめてありますので、参考になれば幸いです。
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